飲食店業界に20年近くかかわり続けている私として、ズバリ「飲食店経営が厳しくて儲かりにくい」というのは切実に感じます。
儲からない理由としては様々ですが、
- 利益率が低くて安定しない
- 競争率が高くて顧客満足度を上げにくい
- 準備や経験不足のまま開業してしまう
このように、飲食を取り巻く環境の難しさに加え、経験不足のまま経営開始できてしまう面も強いです。
正直、美味しいだけのお店では成功するのは難しいです。
他店との差別化、自店ならではの強みがなければ失敗してしまう可能性が高いことを念頭に置いてください。
そして、成功するお店はそれぞれの強みがありますが、失敗するお店には共通点もあります。
このページでは、飲食店経営の厳しい現実と儲からない理由と合わせて、失敗しないための大切なことをまとめてみました。
飲食店経営で成功する可能性を高めたい方はぜひご参考ください。
廃業率から見る飲食店経営の厳しさ
飲食店は、最も廃業率が高い業種=経営が厳しいことでも知られています。
参入ハードルが低くて競争率が高いうえに、そもそもの利益体制が厳しいことが理由と考えられます。
具体的に、業種ごとの廃業率もまとめてみたので見てみましょう。
- 宿泊業, 飲食サービス業:5.9%
- 生活関連サービス業,娯楽業:4.8%
- 小売業:4.4%
- 情報通信業:4.0%
- 学術研究、専門・技術サービス業:3.7%
- 金融業・保険業:3.6%
- 全産業:3.4%
- 電気・ガス・熱供給・水道業:3.4%
- 卸売業:3.4%
- 不動産業、物品賃貸業:3.4%
- 鉱業、採石業、砂利採取業:3.4%
- サービス業:3.9%
- 建設業:3.1%
- 製造業:3.0%
- 教育、学習支援業:2.9%
- 運輸業、郵便業:2.5%
- 医療、福祉:2.4%
- 複合サービス事業:1.0%
※前年度の事業者数と当該年度の廃業事業者数から算出
参考:中小企業庁・開廃業の状況
全業種での廃業率が3.4%という数字と比べても、飲食業は5.9%と高い数字ですね。
ただ、「1年間で全体の5.9%しか閉店しないのか。94%は生き残るなら大丈夫だな」という考え方は危険です。
新規視点で見ると、開業から3年以内の廃業率は70%、5年で80%、10年では90%以上という数字も出ています。
これから開業する方は「最初の3年を生き残れるのは30%しかない」と考えて、しっかりと計画的に店舗運営をしていきましょう。
これから開業準備をするという方はこちらもご参考ください。
飲食店の閉店理由
「あれ?あのお店、お客さん入ってたのに閉店してしまうのか」
というケースも割と目にするかと思います。
これは、売上があるものの経費が大きくて利益が出ないパターンもありますし、収益以外の問題パターンも多々。
- 赤字続きで損切り
収益に見通しが立たなくて閉店 - 資金ショート
赤字や各トラブルでキャッシュフローが悪くなり資金がなくなる - スタッフ不足
社員やアルバイトが足りなくてお店を回せない - 後継者がいない
店主引退時に - 近隣トラブル
行列・匂い・駐車等色々な問題
基本的には収益的な問題での閉店がほとんどですが、利益が出ていても閉店せざるを得ないケースもあります。
トラブル解決は集客面だけではなく、飲食店営業においてクリアするべき大きな課題のひとつです。
経営管理はもちろんですが、人間関係や近隣関連にも常に気を配っておきましょう。
飲食店が儲からない理由
飲食店が儲からない理由はたくさんあります。
- 人件費が大きい
- 仕込みを含めて労働時間が長い
- 廃棄ロスが出てしまう
- 利益率が低くて安定しない
- 食材や燃料費高騰の影響を受けてしまう
- 参入ハードルが低くサービス競争率が高い
- 美味しいだけでは儲からない
- 初期費用が500万円以上かかりやすい
- 経営経験が浅いまま開業できてしまう
このようにたくさんの理由があり、他業種と比べて飲食店が儲かりにくい状況となっています。
しかし逆に考えると、これらの課題をクリアできれば儲かるお店を作ることもできるということでもあります。
一つ一つの課題をしっかりとクリアし、できる限り儲かりやすいお店作りを進めてください。
そして重要なのは、成功するお店はそれぞれの強みを持っていますが、失敗するお店には共通点がある点です。
失敗するお店の共通点
飲食店(だけではありませんが)経営において、失敗するお店の共通点をチェックし、自店を改善することは非常に大切です。
- 強みのない妥協したお店作り
- 集客や顧客満足度向上に消極的
- ターゲットがあいまいで万人受けを狙ってしまう
- 経営管理がずさんで経費を把握していない
- 運転資金を確保していない
飲食店において美味しいのは当たり前で、その他の付加価値で差別化しなければなりません。
「みんなに喜ばれる」万人受けするお店を作りたくなってしまいますが、特徴が無くなってしまうデメリットが大きいです。
強みがあってこそのリピートなので、具体的に決めたターゲット層は「何を喜ぶのか?」を熟考してください。
「誰か一人に刺さる」お店を作ると、結果多くの人に好まれるお店となる傾向もあります。
もちろん、売上と経費管理による改善の繰り返しも重要です。
そのためにも、余裕ある運営のできる運転資金はぜひ確保しておきましょう。
運転資金の目安としては、経費の最低3か月分です。余裕を持つなら6か月分を確保しておきましょう。
飲食店経営で5つの大切なこと
飲食店経営で大切なことはたくさんありますが、私が重要だと思う5つをピックアップさせていただきます。
- 高い顧客満足度(美味しさや接客やお店の雰囲気)
- 顧客満足度を維持しつつの原価率の低さ(単価を上げても許容される料理やお店の雰囲気)
- 立地に対するターゲットに適したお店作り
- 応援されるお店
- 文化を作れるお店
顧客満足度や原価率の低さは当たり前でもありますが、他3つは意外と意識しているお店が多くありません。
立地に対するターゲットに適したお店作り
繁華街と観光地と工業地帯と住宅街、さらに住宅街でも学生街か高級住宅街かで全く客層は異なります。
立地による客層は絶対に把握してください。
遠くからでも来店してはくれますが、まずは近隣のターゲット把握です。
老若男女、仕事や趣味傾向、生活時間帯、なんでもわかるほどにその人たちが喜ぶお店を作れるはずです。
具体的に絞った客層が喜んでくれる料理メニューやお店造りをしてください。
物件を契約する前に、1週間ほど人通りを観察するくらいでもいいと思います。
飲食経験豊富なファミレスやファストフードはそのくらいは当たり前に調査しているくらいです。
応援される飲食店を作る
「応援されるお店」を作ることはとても大切です。
多忙な飲食店としては忘れがちにもなってしまうかもしれませんが、社会や地域に貢献活動しましょう。
結果、メディアに取り上げられたり、仲間ができたり、お客様に注目されたりと遠くない未来にお店に返ってきます。
リターンを期待して社会貢献するのも何ですが、社会貢献の入口はなんでもいいと思います。
やらない善よりやる偽善ですし、行動している内に社会貢献活動そのものに価値も見い出してくるかもしれません。
社会貢献活動の例
社会貢献活動の例はたくさんあります。
災害時のボランティア活動や支援物資提供、寄付等、タイミングや内容はデリケートな部分もありますが基本的に喜ばれます。
また、飲食店ですから、無料の炊き出しや物資支援も喜ばれることでしょう。
他には、地域での無料イベント開催も社会貢献活動の一環として評価されるので、積極的にお店を使って地域貢献するのも効果的です。
そして、活動内容はしっかりとSNS等で報告もしましょう。
必ずや応援されるお店へと繋がっていくはずです。
文化を作れるお店は最強
文化を作れるほどの飲食店は最強です。
新ジャンルを生み出したり、地域の名産物とまでなったりすると、主導権はあなたのお店のものです。
売上が伸び続けるだけではなく、料理単価=原価率もコントロールしやすくなり、高い利益も安定しやすくなります。
難易度は高いですが、文化を作る気概でお店のコンセプトを考えてみるのもいいかもしれません。
文化を作れるお店は、自店の利益だけではなく、地域貢献するほどの力をも持ちます。
結果、応援されるお店へと繋がっていくので、ぜひ最終目標のひとつとしてみてください。
まとめ
- 飲食店は廃業率5.9%で業種別1位の厳しさ
- 閉店理由は赤字以外にも様々
- 儲からない理由は参入ハードルの低さと利益率の低さ
- 成功するためには失敗したお店の共通点からも学ぶ
- 経営管理と改善の繰り返しは当たり前
- お店の強みを作り出して磨く
- 応援されるお店作りが大切
飲食店は厳しいのも現実ですが、儲かっているお店があるのも事実です。
「美味しいだけでは儲からない」ということは絶対に忘れずに、お店の強みを作り出してください。
あなたのお店が地域の名店となりますように。